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今後の地域医療はどうあるべきか   -令和元年9月

 中山間地域の人口減少では、高齢人口さえも減少し、在宅の介護力も低下している状況で、地域の病院が今後どのように地域医療を支えていくべきか、大きな岐路にさしかかっています。患者の減少は病院の経営を悪化させ、経営の悪化は病院の縮小、減少となり、地域に医療機関がなくなれば、地域からの人口流出は加速し、更に経営は悪化します。しかし、我々医療従事者には地域の人口減少は止めようもありませんので、地域医療を支えるために少しでも地域連携、病院間の連権を進めていくことが肝要だと考えています。地域連携(地域間連携)、病診連携(病院診療所連携)、行政との連携など多くの施設、関係機関との折衝が必要です。当院では本年3月に定年退職となった生田哲二氏を渉外担当の病院長補佐として再登板してもらい、地域連携を今後いっそう積極的に進めていきたいと考えています。
 では、どのような連携を目指せばいいのでしょうか。まずは医師確保と病院の役割分担です。医療は専門分化してきましたが、病院毎にすべての専門医を確保することは困難であり、専門分化による弊害も顕在化しています。中山間地の医療のあるべき姿として、一般診療は総合診療医がプライマリ・ケア(※1)として担当し、専門医については病院単位ではなくある範囲の地域として確保することが効率的です。例えば小児科では日野病院の常勤医が日野郡全体をカバーするといった方式です。どの程度の地域で各専門医が必要であるかは疾患の頻度や緊急性によって変わりますが、この方式によって地域のどこかに専門医がいるようにすべきだと思います。そうすれば各病院、診療所の役割分担も自然と整備されます。その病院の得意分野をこの地域の中で受け持つようにし、患者を集めることが専門医を維持していくために必要です。将来的には病院間、病診間の医師の交流もできればいいかと思います。
 一方、プライマリ・ケアについては各病院が十分対応できるように、総合診療医を必ず確保する必要があります。そのために日野病院では総合診療医を育てるための教育を、鳥取大学地域医療学教室と協力しながら日野病院をフィールドとして行っています。数年後にはこの中から地域で働く医師が出てくるものと期待しています。また、高額な医療機器に関しては単一病院のためだけではなく、地域全体のニーズを十分に調べて購入し、複数の医療機関が自由に使えるような体制を整備する必要があります。
 次の連携は行政や地域の老人福祉施設を含めた連携です。現在でも施設とは医師の派遣診療など連携をとっていますが、より綿密で垣根を低くすることによって、患者さんには病院にいるのと変わらないケアが受けられるようにしたいと考えています。行政においても1町ずつではなく複数の町が集まって共通した基盤を作るべきです。これらには多くの難題がありますが、一つずつ解決していきたいと思います。もう、ゆっくりと静観できるような状況にはないことは多くの人たちが知っているはずです。今、動き出すときです。

※1 プライマリ・ケア:身近にあって何でも相談にのってくれる総合的な医療