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年頭のご挨拶~「地域枠」と地域医療教育~ -平成24年1月


 明けましておめでとうございます。本年も変わりませず、日野病院組合をよろしくお願いいたします。
 さて、医師不足、偏在が叫ばれて久しくなります。その対策のひとつとして、現在多くの大学医学部で入学試験に「地域枠」を設けています。「地域枠」を受験できるのは、原則として地元高校出身者のみです。「地域枠」の学生は、他県からの学生に比較して、将来地元に残る可能性が高いと期待されています。
 鳥取大学でも平成18年度に「地域枠」が創設されました。そして、今年の3月末にはその第1陣が卒業する予定です。「地域枠」の定員は当初5人でしたが、平成21年からは「特別養成枠」として5人が追加されたため10人となりました。他大学と同様、在学中は県から奨学金が支給されます。学生が卒業し、2年間の臨床研修を終えた後、県内の病院などで一定期間常勤医師として勤務した場合には奨学金の返還は免除されます。従って、「地域枠」の学生には、事実上、県内での勤務が義務づけられています。
 「地域枠」については、さまざまな問題が指摘されています。その1つが、職業選択の自由という観点から、地元での勤務を法的には強制できないという点です。実際、長崎大学医学部では「地域枠」の学生の40%以上が奨学金を一括返還し、義務としての県内勤務を回避していたそうです。
 この長崎県での調査で興味深いのは、自治医科大学出身者にはそうした動きがほとんどなかった点です。自治医科大学は「地域枠」のモデルとなった大学です。同大では在学中の学費などを出身都道府県が貸与します。その費用の返還は、学生が卒業後9年間地元で医療に従事すれば全額免除されます。
 自治医科大学では、「地域医療に進んで挺身する気概と高度な医療能力を身につけた医師」、すなわち「総合医」を養成するために徹底した教育が行われます。これが、「地域枠」の学生と比較して、自治医科大学出身者が地域医療に対するモチベーションを高く維持できる理由と思われます。「地域枠」に限らず、学生を地元に残すためには大学での教育が重要なのです。
 鳥取大学では、鳥取県の協力のもと一昨年に「地域医療学講座」(谷口晋一教授)が新設されました。同講座の研究目的の1つは、地域医療を担う人材を育成するための教育、すなわち地域医療教育の方法論の開発です。その一環として、昨年、日野病院を始め県内の多数の病院、診療所が参加して「地域医療体験実習」が実施されました。鳥取県の医療の維持・発展に果たす「地域医療学講座」の役割は今後ますます大きくなると思われ、日野病院組合としても大いに協力したいと考えています。 
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