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年頭のご挨拶 ~在宅医療から地域包括ケアシステムへ~ -平成25年1月

 明けましておめでとうございます本年も変わりませず、日野病院組合をよろしくお願いいたします。
 振り返りますと、昨年度は世界中で政権交代や、そのための選挙が行われた年でした。アメリカではオバマ大統領が再任されましたが、フランス、中国、韓国などでは新しい指導者が誕生しました。ご承知のように、日本では年末の衆議院選挙で自民党が圧勝し、安部新政権が発足しました。新政権の政治、経済、外交の舵取りが注目されます。
 ところで、同選挙で大敗北を喫した民主党ですが、地方交付税の増額、一括交付金の創設などの政策により、財政難に陥っていた多くの地方自治体や地方公営企業が一定の恩恵に預かったのは事実です。自民党が是非この路線を継承し、間違っても小泉構造改革への回帰を図ることがないように願いたいものです。
 さて、昨年5月、厚生労働省が「在宅医療・介護あんしん2012」を公表して以来、在宅医療に対する注目度が一段と増しています。この中で在宅医療・介護の推進が必要な背景として、①日本では入院医療・施設介護が中心であり、平均入院期間はアメリカの5倍、ドイツの3倍と長く、また自宅で死亡する人の割合は1950年の80%から2010年は12%にまで低下している、②国民の60%以上が自宅での療養を望んでいる、③死亡者数が、2040年にかけて今よりも約40万人増加する、などが挙げられています。
 日野病院組合は、早くから在宅医療に取り組んできました。その理由は、この地域には以前より高齢化の進展(ADLの低下)、高齢者世帯の増加(通院介助の制約)などによる病院へのアクセス不良という問題があったからです。患者さんの多くは脳血管疾病を有する高齢者ですが、最近では末期のがん患者さんに対しての在宅緩和ケアにも力を入れています。
 平成19年以降の実績をご紹介しますと、年間50~70人の患者さんに対し450~550回の訪問診察を行いました。また、訪問看護では年間30人程度の患者さんに対し1800~1900回、訪問リハビリテーションでは年間40人程度の患者さんに対し2000~2400回という実績を上げました。さらに、年間10人程度の患者さんには、100~120回の訪問服薬指導も行いました。
 もちろん、日野病院組合だけで患者さんの自宅での療養を支えることは出来ません。それを可能にしているのは、地域包括支援センターなどの行政機関、社会福祉協議会などの福祉団体、介護や生活支援サービス業者、さらには地域住民の皆さまの存在です。
 このような様々な社会資源を適切に活用しながら、患者さんのみならず地域のすべての高齢者を支援しようという考え方が地域包括ケアです。前述した「在宅医療・介護あんしん2012」などを通して、国は地域包括ケアを提供できるシステム、すなわち地域包括ケアシステムの構築をこの地域にも求めています。 
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