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地域包括ケアシステムと地域包括ケア病床 -平成26年9月

 今年の夏、日本各地は大雨による甚大な被害を被っています。特に、広島市北部では8月20日未明に降った局所的な大雨により住宅の裏山が広い範囲にわたって崩れ、複数の住宅が土砂に巻き込まれる被害が発生しました。9月5日時点での死者は72人、行方不明者は2人に達しています。最近、日野地区でも度々大雨警報・注意報が発令されており、今後も十分な注意が必要です。 
 さて、最近、いわゆる「2025年問題」がテレビや新聞で取り上げられるようになりました。2025年は団塊の世代が後期高齢者となる年であり、その頃になると高齢者数や単独世帯数、さらには認知症を持つ人の数が飛躍的に増加すると予想されています。このような危機的状況に対応するために、厚生労働省は2025年を目途に地域包括ケアシステムと呼ばれる住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される体制を実現するよう各都道府県、市町村に呼びかけています。地域包括ケアシステムにより、高齢者は、たとえ介護が必要な状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることが可能となるのです。
 人口動態や社会資源の多寡には大きな地域差があります。日野地区では高齢化はもとより人口減少も急速に進行しています。しかも社会資源に乏しいことから、他の地域に先んじて地域包括ケアシステムを作り上げる必要があり、実際そのようになりつつあります。
 本年度の診療報酬改定の主要な目的は地域包括ケアシステムへの誘導と考えられています。そのための仕組みのひとつとして、亜急性期入院医療管理料にかわり、地域包括ケア病床入院料(200床以上の病院では病棟単位での算定が可能)が新設されました。
 地域包括ケア病床の対象となる患者さんは、当院や他の急性期病床に入院中の方で、病気の急性期を脱し病状が比較的安定した方です。また、在宅療養中か介護施設入所中の方で、急に容体が悪くなったものの比較的軽症な方も対象になります。地域包括ケア病床では、これらの患者さんが在宅や介護施設へ早期に復帰できるように、主治医、看護師、リハビリテーションスタッフ、ソーシャルワーカー、その他スタッフが協力して様々な支援を提供します。
 このように、地域包括ケアシステムのなかで地域包括ケア病床が果たす役割は極めて大きいと思われます。日野病院では、本年10月より亜急性期病床25床を地域包括ケア病床に転換することにしました。私どもは従来行ってきた在宅医療、他職種協働事業(服薬アドヒアランス向上対策、看護の宅配便など)などに加えて、地域包括ケア病床により日野地区の地域包括ケアシステムの構築に貢献したいと考えています。

 


平成26年9月