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開かれた病院を目指して - 平成18年9月


暦のうえでは、暑さが和らぎ、涼しい風が吹き始めるころとされる「処暑」(8月23日)が過ぎました。最高気温が30度を越す厳しい残暑が続いていますが、それでも何となく周囲に秋の気配が漂い始めました。色づき始めた赤とんぼの姿が目立ってきましたし、耳をすませば“つくつくぼーし”の鳴き声も聞こえます。旅行やスポーツなど何をするにしても最高の季節がもうすぐやって来ます。
病院長職を拝命してから、2ヶ月が過ぎました。大きな責任を感じながら日々の仕事に取り組んでおりますが、何といっても経験の浅さからとまどうことも少なくありません。「自分のやり方でやればいいんですよ」と背中を押し続けてくれる生田事務局長、小村看護局長を始めスタッフの皆様には感謝の言葉もありません。
さて、平成17年度日野病院組合事業会計決算がまとまりました。当年度は経費削減の努力などにより前年度に比較し1,600万円程度の医業収支の改善が図られましたが、最終的には資金収支で約8,500万円の赤字を計上する結果となりました。その主な理由としましては、当年度が平成12年度の病院の移転新築時に購入した医療機器の元利償還金の最終償還年度に当たったこと、加えて当年度から病院建物の元利償還が始まったこと、さらには早期退職者の増加により退職給与金の支出が増えたことが挙げられます。厳しい財政状況にある構成3町、特に日野町に対し大きな負担をおかけしますが、平成17年度に企業債償還額がピークを迎えることは当初より予想されていたことでもあり、関係各位、住民の皆様にはご理解を賜りますようお願いいたします。平成18年度以降の日野病院組合の経営予測はどうかということですが、確かに起債元利償還金は平成17年度より4,000~5,000万円減少いたします。しかし、2年ごとに行われる診療報酬改定の影響(平成18年度は3%前後のマイナス改定でした)や早期退職者による退職給与金支出の増加などにより厳しい状況が続くことには変わりないと思われます。 ということになりますと、日野病院組合は今までどおり医療・福祉行政を担う組織であり続けることができるのか、それとも企業として成り立つ組織になるべきなのかが問われることになるでしょう。後者を選択すれば、収益性の向上を目指した効率的な経営が行われることになります。しかし、経営の効率化には、多かれ少なかれ現在組合が持っている医療機能の縮小を覚悟しなければなりません。そこで近隣の病院との機能分担はどうかという話になる訳ですが、それには各病院の利害が絡んできますし、何よりも医療機能の移譲に伴う負担の増加がすんなりと地域住民の皆様に受け入れられるかどうか疑問です。誰もが地域連携の重要性は理解していますが、具体的な形になるためには解決されなければならない問題は多いのです。
現場を預かる責任者として、日野病院組合職員の皆様に申し上げたいことがございます。それは、病院の経営形態がどう変わろうと、患者さんが求めるものは安全で質の高い医療であるということです。現時点の経営状況を正しく理解し、コスト意識を高めていただきたいとは思いますが、効率性を求めるあまり病院の本来の存在意義を見失わないようにして欲しいのです。今こそ、私ども職員は「自治体病院の職員としての自覚と使命感を持って、より良い患者サービスに努める」という日野病院の基本理念に立ち返り、患者さんにとって最善の医療を誠実に実行しなければなりません。救急医療体制を堅持し、各種委員会活動を充実させ、検診・ドックの受け入れ増加に取り組み、「出かけていく医療」を拡大し、黒坂診療所・老健施設「あやめ」との連携を深め、健康教室の開催などを通して開かれた病院を目指しましょう。そうすることが、今後も地域の皆様に日野病院組合の存在を認めていただける最良の方法であると信じています。

平成18年9月