出かける医療・近づく医療
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最近思うこと -平成21年5月


 遅咲きのさくらも散り、山々は新緑の季節を迎えました。1年のうちで最も過ごしやすい季節ですが、就学や転勤のため生活の場が変わったり、農家では田植え作業に追われるなど、何かと気ぜわしい時期でもあります。疲れなど出されませんよう、お気を付け下さい。
さて、日野町では今年(平成21年)の1月に根雨のショッピングセンターが閉店し、その後間もなく野田の自動車部品用品製造会社が閉鎖されました。不況に加え、人口減少が事業継続のネックになったと思われますが、両企業とも長年にわたり町民の生活や雇用を支えてきただけに、その影響は甚大でしょう。4月になりますと、江府町、日南町で計10校の小学校が閉校となり、それぞれ1校に統合されました。少子化の進行や財政難のためのやむを得ない措置と思いますが、学校は地域のシンボルとしての位置付けもありますので、寂しい限りです。
 このような出来事は、日野郡だけに留まりません。中山間地ではどこでも、人口減少、少子高齢化を背景に企業、学校さらには行政機関の規模縮小、統廃合が進んでいます。では、中山間地の病院はどうでしょう。やはり、その役割や存在意義は減りつつあるのでしょうか。答えはノーです。というのは、人口減少が著しいのは若年層であり、病院を利用することの多い老齢人口は当分の間減らないという事実があるからです。さらに、独居、高齢者世帯が増え、さらには公共交通機関の運行制限のため、病院に来たくても来られない患者さんをどうするかという問題もあります。多くの高齢者が安心して暮らしていくためには、ある意味では都市部以上に医療、さらには介護、福祉サービスの充実が求められるのです。
 日野病院組合は、県南西部の中核病院としての役割を担う日野病院を中心として、ここ数年の間に「出かけていく医療、近づいていく医療」をスローガンに、サテライト診療所の設置や在宅医療の充実などを図ってまいりました。また、あやめを始め近隣の介護施設と連携することにより、医療福祉複合体として地域に貢献できるようになりました。さらに、日本医療機能評価機構の審査を受け、その認定病院に合格したり、大谷眞二外科医長の指導によりがん医療に関する全国レベルの研修施設に認定されるなど、医療の質の向上のために現在も努力しております。
 今後、私どもはこの体制を堅持しなければなりません。しかし、一方で、日野病院組合は医師、看護師不足という大変な問題に直面しています。言うまでもなく、この問題は全国の病院、特に地理的条件の悪い場所にある自治体病院に共通する深刻な問題です。日野病院組合が人材確保のため努力するのは当然ですが、少しでも早い問題の解決に向けた施策の実行を国や県に強く望みたいと思います。

平成21年5月