鳥取県は「医師多数県」? -令和7年1月
鳥取大学医学部医学科では来年度から入学定員が減らさ れる予定です。厚労省による 計算では鳥取県は「医師多数県」となるため、医学科の定員を医師少数県の医学科の増員に回すことになりました。しかし、本当に鳥取県は「医師多数県」でしょうか。このことについては 平井知事を含めて「医師多数県」と指定された県知事たちが強く反対しています。しかし、厚労省はあくまでも、今後の人口減少と医療費の増大を見据えて方針を変える気はないようです。 では、この「医師多数県」とはどのような方法で決められたのでしょうか。厚労省は人口あたりの医師数、医療の需要を踏まえて医師偏在指数を作成し、この指数を順番に並べて上位 1/3 が多数県、下位 1/3 を少数県としています 。 鳥取県は47都道府県中13位にあるため、「医師多数県」です。しかし、これには多くの問題点があります。まず、この医師偏在指数自体が不正確で、①医療の質や診療科の違いが十分に考慮されていない ②地域の特性や独 自の医療ニーズが無視されている ③患者の移動に関するデータが1日分のみで不十分 ④交通アクセスや医療機関へのアクセシビリティが考慮されていないことがあります。また、医師偏在指 数の順に並べること自体が相対的な評価であり、本当の医師の必要数を考慮していません。欧米に比べれば日本の医師数は未だに少なく、日本全国が医師少数県なのです。OECD加盟国の人口 1000人あたりの医師数は3.5人に対して日本は2.4人です。 医師数の少なさを一人一人の医師がたくさん働いてカバーしています。また、大学の医学科定員を県単位で考えるのも大間違いです。なぜなら、鳥取大学は島根県にも医師を送っているので、県単位で考えるべきではありません。本当に必要な医師数を考えるには、 診療科ごとの需要、ワークライフバランス、将来の医療ニーズな どを総合的に検討する必要があります。単純な数値比較ではなく、地域の実情に即した柔軟な対応が求められています。
鳥取県の医師数は今後減少していく可能性が高いと推測されます。私が医師になった40年前は毎年60人以上が鳥取に残りました。しかし今は30〜40人程度となっています。特に懸念されるのは、最も働き盛りの中堅医師が非常に少ないことです。私たちの世代が最も医療を必要とする10年後以降、十分な医療を受けることができるのか不安です。これは鳥取県だけでなく、地方都市、さらに大都会へも広がる問題と思います。皆さんもぜひ、自分事として考えてみてください。
令和7年1月