「近くに頼れる医療を」-黒坂診療所20周年に寄せて -令和7年9月
気がつけば、当院が運営する 地域の診療所の一つ 黒坂診療 所が、節目の二十年を迎えました。もともとは地域の先生が支えてこられた医院を引き継ぎ、通いやすい場所で診療を続けています。人口が減ると、個人開業では継 続が難しくなることがあります。そのときに困るのは、そこに通っておられた残された患者さんです。だからこそ当院は、診療日数を限っても「できるだけ近くで診てもらえる」形を守ってきました。
普段は診療所で顔なじみの医師に相談し、検査や入院が必要になれば 当院へスムーズにつなぐ。診療所の医師は当院から赴任していますから、予約や紹介が滞ることはありません。診療所と病院が同じチームとして動く――地域医療の理想形だと私は考えています。これから人口減少が 進む地域では、中核病院が複数の診療所を支える仕組みがますます大切になるでしょう。通いやすさを守ることは、高齢化が進む地域にとって何よりの「医療のインフラ」です。
最近テレビでよく耳にする言葉に「総合診療」があります。体の部位ごとに専門が分かれる診療科とは少し違い、患者さんを〝全体として〟捉え、必要に応じて最適な専門へ橋渡しする役割を担います。今放送中のテレビドラマ「 19 番目のカルテ」が話題を呼んでいます。松本潤が演じる総合診療医の活躍、生き方のお話しです。このドラマがきっかけとなり、当院の総合診療医である大塚裕眞先生も何度かテレビに出演し、総合診療医のついて熱く語っています。当院は平成26年から「地域医療 総合教育研修センター」を開設し、総合診療医の育成にも取り組んできました。診療所を任される医師はいずれも総合診療の訓練を受け、幅広い症状の〝最初の窓口〟として地域の皆さんに向き合っています。
私自身も、大学では肝臓を専門として研鑽を積みながら、一般内科や消化器内科として地域医療の現場に身を置いてきました。当院に赴任してからは、専門性を生かしつつ総合診療の視点を学び直し、若手医師とカンファレンスを重ねています。病気だけを見るのではなく、「その人 の暮らし」を含めて考える――それが総合診療の肝であり、地域医療の神髄だと感じています。
さて、黒坂診療所の20周年を記念して、9月25日(木)13時より同診療所で講演会を開きます。立ち上げ時を知る生田哲二病院長補佐がこれまでの歩みを振り返り、大塚裕眞総合診療医が「健康寿命」をテーマにお話しします。最後に私、孝田雅彦からは、日々の相談で質問が多い「嗜好品とサプリメント」を、医学的根拠を踏まえて分かりやすくお伝えする予定です。予約不要ですので、どうぞお気軽にお立ち寄りください。
二十年は、地域の方々に支えていただいた年月です。これからも「近くに、頼れる医療」を合言葉に、診療所と病院が一体となって皆さんの健康をお守りします。困ったときは、どうぞ遠慮なくご相談ください。病院長として、そして一人の医師として、変わらぬ責任と誇りを胸に、次の十年へ歩みを進めてまいります。


